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FLAT OUT 155

本質を知る

2011年12月中旬

私の工場に今、ボディがカーボンで出来ている
イタリアンスポーツが入庫している。

昨夜まで塗装表面のキズ取りと表面処理作業に四苦八苦していた。
多数のスポットランプの下でその表面をよく観察すると、
いわゆる「カーボン目」が均等に浮かび上がって見える。
さらに継ぎ目部分や裏に補強材が接着されている箇所は
目のパターンが変わったり、接着箇所が表に浮き上がっている。
これはカーボンで作られたボディ表面にあって当然の現象だ。

本質を知る_b0210221_20335767.jpg


フォーミュラカーやGTレーシングマシン、古くはグループCカーなどを
見ると同じ現象がカーボン製故、見ることができる。

その昔フェラーリF40がボディ修復に入庫した時、
工場の作業者はオーナーにカーボン目をつぶさないように
マラネロから出荷された時のオリジナルコンディションに
なるべく近い状態にペイントして欲しいと懇願されたという。

このオーナーが求めているのは
カーボン故の何たるかであって、超鏡面仕上げの美しさではないのだ。
ただその美しさは修復直後のものであっていずれは再び劣化し朽ちてしまう。
そのオーナーはその刹那に莫大な金額を注ぎ込む。

しかし最近は事情が異なるらしい。
そのカーボン表面のパターンの変わり目や、腫れやヒケを不具合として
ディーラー、インポーターにクレーム申請されたことがあるらしい。
このオーナー、カーボン製ボディをもつスポーツカーの価値をまったく理解していない。

納車直後の美しさ、
自分が乗りこなすことで醸し出すヤレ具合、
年数を重ねることで増していく貫禄、
日々、季節、年月の移ろいの中を共に過ごし、
共に歳をとるという醍醐味がこの手のスポーツカーにはあるはずだ。

まあろくに「乗り」こなせもしないでオーナー自身年寄りになっていってるくせに
自分のことは棚に上げ、オンナとクルマには不変を求める事自体、まったくもって
男らしくない。

納車(新婚)直後の美しさを永遠に保ちたい(保って欲しい)からといって
そのクルマ(オンナ)本来のあり方を受け入れていないのだ。
ということはオーナー(パートナー)たる資格なしという結論にいたる。

カーボン製ボディは年月とともに
その網目が塗装表面に浮かび上がり、
接合部分の継ぎ目は製造時にどんなに平滑化しても見えてくるし、
応力のかかる部分には塗装のクラックや表面の歪みが生じるものだ。

メーカーはその実例をノウハウとして次のモデルに活かしていく。
フェラーリのF1、最新の911が最良の911とするポルシェだって
いつもそうだ。そのクルマ、メーカーの進化を共にお金を払って
味わうのが真のカーマニアだろう。

自分の妻が老いていこうが、娘息子が美しく成長することに
喜びを感じるのが夫であって、それを共にする妻を何よりも大切に守る。
それが男だろう。

だから無粋な御仁にはスポーツカー(いいオンナ)に乗って欲しくないのだ。
これ以上世の中のクルマ(オンナ)達を汚すことだけはしてほしくない。


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by kodairaracing | 2011-12-21 08:55 | イタリア車
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